来 歴


残りの夏 **に


ことばは
もうどこへもとどかなくなった

トタン屋根の高さで
小さな盃の形に
色あせた花を並べている朝顔
日ましに遠ざかるおもかげを
空の海月に似せて
中天を遊泳して行く昼の半月
呼んでも呼んでも
目をあけない
椎の木かげの眠り猫
雨ざらしになったままのベランダの揺り椅子

目につくあれもこれも
捉えようのない
ことばのもどかしさに重なってくる
こんなに明るい景色なのに
今や残りの夏
季節のかげったあたりまで踏みこんで
あなたからの答えをしきりに探している

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